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社長日記

2008年04月19日

一週間の日記 4月14日から4月20日まで


◇深呼吸する言葉ネットワーク

◇デメ研サロン

◇橘川幸夫事務所


4月14日(月)
◇「ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。 」の反応がとても面白い。これまでの読者の人たちの反応も楽しかったが、それ以上に、はじめて僕の本を読んだ人たちの反応が嬉しい。何人か「本を読んで泣いた」というメールがあった。タイトルがタイトルなだけに(笑)変な気持ちだが、僕の本はドラマではないし、泣かせるために作ったわけでもないので、素直に嬉しい。返事は、だいたいこんな感じ。「泣きそうな気持ちを、泣かないで言葉にしてください」と。言葉の力を、あらためて感じた。「トイレの中に置いて何度も読み直す」というメールも数人いた。トイレの常備本として売りたい(笑)

◇今回の本の失敗は連絡先を入れなかったことだな。僕は自分の著作には最初から住所とか電話番号とかメールアドレスを入れてきた。本はパブリックな手紙だと思っていたから。70年代のロッキングオンは、ライターの住所を全部入れていた。途中から渋谷とか松村はイタズラみたいなのが増えてきたので編集部気付けにしたが、僕は最後まで掲載していた。今回は、うっかり入れ忘れたのだが、mixiで検索してメールくれる人が何人かいた。こういう時にmixiのパワーとを感じる。レビューの検索をしてみると、9本もレビューが載ってる。アマゾンでも6本、greeは0本だ(笑)。これまで、連絡名簿はgreeにまとめていたが、今後はmixiに移そう(笑)。橘川とマイミクしていない人は、申請してください。深呼吸のコミュも作りましたので登録してください。

◇ソニーデジタルエンターティメントの福田淳さんが来社。講談社の入江さん、ライターの福田さん(女性)も同行で、新刊のインタビュー。面白そうな本だ。詳細は発行日が決まってから公開ということで。終わってから先週、フレンドリーの後藤夫妻と行った、ネパール料理店へ行く。福田さんは、社長だが、事業に失敗したらいつでも辞める覚悟でイメージトレーニングをしている、という話が秀逸。この辺が単なるサラリーマン社長とは違うところだ。

4月15日(火)
◇「深呼吸する言葉ネットワーク」に続々と新しい人が合流してきた。対応が大変だが、そういう実務は昔から慣れているし、好きな方だ。なにしろ、ロッキングオンやポンプの時代は、数百枚単位で宛名書きしたり文書をコピーしたり名簿作りして、郵便で連絡を取り合っていた。今はメールで済んでしまうのだから楽なものだ。

◇フレンドリーの後藤くんが来て、「深呼吸する言葉ネットワーク」のシステムについて相談。僕のやりたいことを説明する。そのあと、橘川夫妻と後藤夫妻の4人で近所の小料理屋へ。僕以外は、宝塚とサッカーの大ファンなので、その話が盛り上がると、蚊帳の外(笑)。ファンの話はファンでないと意味がない。

4月16日(水)
◇虎ノ門の文部科学省に行き、ランチの時間を使って文科省の10数人の皆さん相手にミニ講演を行う。かなり本質的なことをレクチャー。ほとんどリアルテキスト塾である。皆さん、なかなか反応を表に出さないので不安だったが、帰ってから担当の御厩さんからメールが来て「感情を表さないのは職業的な習慣なのでご容赦を」ということで、反応を聞いたら、若い人たちには好評だったとのこと。安心。

4月17日(木)
◇ロッキングオン会議。来週、渋谷・大類・松村・斉藤・橘川で食事をすることになっているので、渋谷と相談。当然、渋谷がおごってくれるものだと思っていたら、割り勘だと(笑)。

◇オンブックの会議。教育支援協会の『自然体験活動基本要綱』がスタンバイ。こういう活動報告は、継続的に出していきたい。

◇コンテンツワークの荻野社長と三宅さんが来社。三宅さんは転職なので、今後は荻野さんと打ち合わせを進める。

◇金子・妹尾・周平くんらと会議。「教育活性化キーマン99」と「地域活性化キーマン99」という本を準備する。その他、いろいろ案件が重なってきた。

◇西日本新聞の川合さんが来社。「なぜ自動車が売れなくなったか」という記事を書いていて、大きな流れの中で自動車を語っている人がいなくて、自動車工業会の機関誌に僕が昔書いた原稿を見つけてきて取材したいということだ。そういう話は、いくらでも出来るので、まくしたてる。こないだの文科省でのレクチャーと同じ文脈だな。時代の構造を見ようとしないで、眼前の課題だけの解決法が多すぎる。最後には、「ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。 」の本をプレゼントして終了。

◇取材が終わって、金子くんたちと再合流して、今週2度目のネパール料理店へ。

◇自宅に帰ってから、急に「深呼吸する言葉」をフラッシュでまとめたくなって、朝方まで作業。元・写植屋の血が騒ぐという感じか(笑)。

■深呼吸和歌集 1

4月18日(金)
◇午前中、銀行処理。デメ研の決算月だ。

◇日販から「ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。 」の「しおりん」が届く。派手な栞だ(笑)。日販系の書店で配布になりますので、書店で見かけたら、受け取ってください。事務所にもありますので、欲しい人がいたら寄ってください。

▼これが橘川新刊の「しおりん」。10種類の栞があります。裏は本の広告です。
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◇午後から自宅に帰って、「深呼吸する言葉ネットワーク」の会議室を作ったり、あちこちに連絡したりして一日が終わる。

◇僕なりの「深呼吸する言葉」の心得をまとめてみよう。

1.「深呼吸する言葉」は情緒と思索を止揚していこうとするものです。感情をぶつけるだけでは伝わらない、理屈だけで攻めても伝わらない。そうです。「深呼吸する言葉」とは、書くために書くのではなく、伝えるために書くものなのです。

2.深呼吸する言葉は日常の生活の中で作られます。パソコンや書斎の中で意識的にひねり出したものではありません。生活する肉体の中から分泌されます。自然に出てくる感覚を大事にしてください。

3.一日一本だけ、私たちに渡してください。たくさんの思いが溢れてきても、一本だけです。一日一回「決める」という行為も大事なことです。みんながみんな溢れ出た言葉を発散させても、受け止められません。決めて、発信してください。

4.言葉の手直しは構いません。自然に出てきたものだけが自然とは限りません。伝わりやすく加工することは、読み手に対してのやさしさです。

5.多くの人が、生活の中で感じながら考え、言葉にして選んで発信する。こういう動きが広がれば、少しは風通しの良い社会になってくれるのではないかと思います。無味乾燥なコメントや、勝ち負けだけの突っ込みにはうんざりしませんか。

6.みんなの「深呼吸する言葉」がたまってきたら、いろいろなカタチで再編集されリミックスされて再発信されます。もちろん、深呼吸する言葉を発信している人であれば、誰でもリミクサーになれます。時代をいろんなステップでダンスして行きましょう。

4月19日(土)
◇来週の土曜日の16時から、林雄二郎さんと「森を見る会」を学大・ガーデンカフェで行う。その後、同じ場所で食事。「森を見る会」は勉強会です。参加したい人は橘川まで連絡ください。

◇なお、これから毎月最終土曜日の夜はデメ研サロンです。いろいろネット上では書けない情報も(笑)教えます。深呼吸歌人の方も遊びに来て下さい。

◇21日の月曜日の午前中ですが、リアルテキスト塾を受けたいという、女子高生しおりちゃんのために、単独講座を行います。単発レクチャーです。平日のこの時間ですが、デメ研に来れる人がいたら、どうぞ。自分で言うのもなんですが(笑)とてもタメになる講座ですよ。

4月20日(日)
◇今回の新刊「ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。 」は、いろんな意味で僕にとって新しい事件です。まず、この本は僕にとって「第2のデビュー本」であるということ。これまでは、どちらかというと自分のために本を出してた(笑)。自分が何を考え、何にこだわっているのかを整理するために文章を書いていたのだと思う。今回のも、そういう側面はあるけど、より外側に向かっています。なので、これまでの読者とは違う人たちのところに届けたい、という意識が強い。

*本のスタイル・内容とも、今の出版の流れからは異質だと思うので、どうすれば販売促進が出来るかを、いろいろ考えた。なにしろ、書店側も本の置き場に困っているようだ。新宿紀伊国屋だとサブカルのコーナー、梅田紀伊国屋だと詩歌のコーナー。どちらも違うと思うのだが(笑)

*お金かけないで販促するにはネットの利用を最大限に使う必要がある。ただ、いわゆる「アルファーブロガー」というのは、IT関係者が多いので、僕の本のようなものが受けるのかどうかは分からない。IT関係のブロガーと親交のある滑川海彦に相談して、そちら方面は滑川のネットワークで献本をお願いした。早速、有力ブログである「ネタフル」「みたいもん」に取り上げていただいた。凄い情報伝播力だ。

*その他、影響のあるブロガーには、いろいろと働きかけをしている。IT関係以外のアルファーブロガーというのは、ほとんどバラバラで、個別にあたるしかない。この辺は逆に、ビジネスチャンスがあるのではないか。

レビュージャパン(khipu)の方では、近日、読者プレゼントを行う予定。まずは読んでもらうことが大切。

*250名を集めて出版パーティを開き、参加者に本を進呈した。僕のパーティに集まる人は、それぞれネットワーカーだから、それぞれのブログで紹介してくれた

*携帯電話の世界では、ソニーの福田さんにお願いして、世界初の「書籍案内の携帯待ち受け」をフリーサービスしてもらっている。とてもカッコ良い。

携帯待ち受け(制作提供・ソニーデジタルエンターティメント)
下記のURLを携帯電話に転送してアクセスしてください。
http://mm.spe.jp/s/cpn/kotoba/top.php

*書店対策としては、本書のフレーズをデザインした「しおり」を制作して来週から全国の日販系の書店で配布する。これも、かなり画期的なことだと思う。

*ということで、これだけ多様な販促活動に熱心な著者も少ないだろう。こういうのが好きだということもあるが、本の売れ行きは、いまひとつ(笑)。ただ読んでもらいたい新しい読者のところには少しずつ届いているようで、反応のメールは凄く嬉しい。

◇相変わらず、僕のやることは、一人だけで頑張るものではなくて、みんなの動きにして行きたいことのプロトタイプ開発。「深呼吸する言葉ネットワーク」は、この1週間余りで20名近い合流者が開始した。

◇『一人で何かをすること、一人で考えたり思ったりすること、それはどのようなものであれ最終的に「たいくつ」する。たとえ、仕事が忙しくたって、時間に余裕がない人でも「たいくつ」している。部屋に閉じこもってプラモデルづくりに熱中している人でも、心の奥底で「たいくつ」する。〈みんな〉でやるしかない。一人でドデカイ陰謀をはりめぐらすことよりも、みんなで、ささいなことをはじめるほうが「たいくつ」しない。』

上記の文章は、1978年に「ポンプ」を創刊した時の編集後記のようなものです。全く30年経っているというのに、やってることも思ってることも、おんなじ(笑)。成長しないのか、最初から、たった一つのことしかやる気がなかったのか。

*橘川の「ポンプ」創刊の時のメッセージは「こちら」を。1978年の文章であることに笑ってください。

◇ということで、「深呼吸する言葉ネットワーク」への合流を強く望みます。

◇毎年、春の日曜日のどこかで蚕豆をゆでる。蚕豆はなにか引き寄せるものがある。以前に、蚕豆をテーマにした物語があったことを思い出して、「後ろ向きブログ」に搭載。この物語も、広大な展開を意図しているものだが、しばらくしてから動きを再開しようと思う。ゆでたての蚕豆はとてもとてもおいしい。

2004年07月14日

蚕豆

蚕豆


1.蚕豆の宇宙

 小さな宇宙船のような蚕豆を指で割ると、中から白い綿のようなクッションに守られた小さな豆が3つ、現れた。容器の大きさに比べたら小さな豆だ。宇宙船の冬眠カプセルに眠っているかのように、豆は静かに存在していた。

 桂乃は三軒茶屋の賑わいのある市場のような八百屋の店先で蚕豆を見つけた。一山380円だったが、それが高いのか安いのかはすぐに判断出来なかったが、無性に食べたいと思った。蚕豆は春の終わりから初夏に向かう、季節が立ち上がるほんの一瞬だけ店先に出る。「蚕豆がおいしいのは1年のうち3日だけ」という伝説もある。今は、どんな野菜や果物でも一年中買うことが出来るが、蚕豆だけは、一瞬の季節を感じさせてくれる数少ない豆である。中華料理屋に行くと一年中、蚕豆と芝海老の炒め物のようなメニューが出てくるが、冷凍物である。蚕豆ほど、露地物と冷凍物の味が違うものは珍しい。まるで違う食べ物であるかのように、蚕豆は頑固に季節を表現する。

 蚕豆はカイコのような繊毛に守られている豆なので、そう呼ばれる。あるいは蚕が繭を紡ぐ季節に実をならせるから、という説もある。空豆とも書き、畑においては空に向かってサヤを立ち上げるからという。原産地は西アジアとも北アフリカとも言われている。いずれにしても、あまり豊かな大地に生まれたものではないのだろう。蚕豆の過保護とも思えるサヤの内部構造が、この豆の苦難の遺伝子の歴史を思い浮かべる。

 人類最初の文明とともに育てられた蚕豆は、今も、エジプトや中国や、パレスチナあたりの人たちが愛する豆である。人類最古の農作物である蚕豆は、しかし、頑固に人間の意志には従わずに、自然の摂理のまま、一年に一度だけ丁寧に実をならせる。

「農業は詐欺である」

 この言葉は、桂乃が付き合っている男が、どこかの焼鳥屋の親父から聞いてきた言葉だ。男は、しばらく、この言葉が頭から離れなくなったみたいで、男の部屋に桂乃が遊びに来ても、ブツブツと、いろんなことを呟いていた。

「うん、そうだよな、古代文明というのは、農作物の発達で開けたわけだけど、農業というのは、本来そこの大地に生まれるべきではない小麦粉の種を播いて、人間の都合で水やったり、肥料やったりして、植物に錯覚を起こさせて成長させて、その結果、人間に食べられてしまうわけだから、植物の側からすれば『詐欺』にあったみたいなもんだよ」
「何いってんの、そんなの人間の側から見れば、当たり前のことじゃないの」
「そうだよ、人間の側から見ればね。でもさ、そろそろ、人間の側からだけではない視点というのを人間は持つべきなんじゃないのか?」
「なんか、頭の固いエコロジストみたいだよ、利夫の言ってることは」
「いやいや、エコロジストは、良い農業みたいなものを評価するんじゃないのかな」
「人間の歴史を否定するわけね」
「四国に福岡正信という百姓がいて、彼の自然農法というのがあるんだ。これは、耕さない、何もしない農業なんだけど。人間は、いろんなことを人間のためにやりすぎたから、何もしないことが、今は一番ラジカルなんだ」
「ふぁーん、利夫は、要するに怠け者になりたいということでしょ」
「あはははは、その通り! だから、お金、貸して!」
「うーん、もう! こないだ貸したの返してもらってないでしょ!」

 桂乃と利夫は、奇妙な出会い方をした。桂乃はある企業に派遣で仕事をしていたのだが、ある日、渋谷駅のホームで通勤電車の列に並んでいて、奇妙な嘔吐感を感じて、列からはずれてしばらく混雑するホームを歩き始めた。なるべく人混みを避けるために、人の少ない方に歩いていったら、ホームのはずれに着いた。ホームのはずれは、ラッシュ時でも、エアーポケットのように人の気配がしない。すぐ近くには、満タンの貯水タンクがあるのに、ここだけは、水が抜かれたプールのような気配がした。

 桂乃は体調が回復するまで、ぼうっとしてそこに佇んでいた。何台もの電車が肉を充填したソーセージのように人を詰めて、走り抜けて行った。電車が巻き起こす風が気持ち良かった。

「会社、サボリかい?」
 背後から急に声をかけてきたのが利夫だった。
「オレも会社がウザクなっちゃってさ、サボろうと思ってんだ。映画でも見に行かないか?」
 いきなり見知らぬ男にナンパされたので、桂乃は身構えた。渋谷や新宿の街を歩くと、あらゆる種類のキャッ男が声をかけてくるので、街では聞こえないフリをするのに慣れてた桂乃だが、これまでのキャッチの声とは違うように思えて、男の目を見た。少し潤んでいるような綺麗な目だった。
「なんだよ、怖い顔すんなよ、たまには、日常生活の階段を外してみることも、人生にとって必要だぜ」
 自分と同じくらいか、少し若いかも知れない男が、学校の先生のような口ぶりで言ったのがおかしくて、桂乃は笑った。
「いいわよ、ちょっと気分が悪くなっていたんだけど、もう大丈夫だから。今日は、サボっちゃおう」
「よっしゃあ、いこいこ!」
「ちょっと待ってね、会社に電話するから」

 桂乃は会社に電話した。
「あのー、木下佳乃ですけど、今日は休ませてもらいたんですけど、ええ、ええ、そういうことではないんですが、ええ、だから、個人的な事情なんで、ええ、はい、分かりました。よろしくお願いします」
 なんだか、会社の人ともめているようだった。
「大丈夫か? 体調悪いとか、親が病気だとか、適当な理由言えばよいのに」
「私、嘘は嫌いなんです」
 利夫は、華奢な女の子が、えらく芯があるので、少し驚いた。
「あははは、そっか、そりゃあ、正しい! 嘘ついて会社に言い訳なんかする必要ないもんな。あははは、アンタは正しい!」
                                   (つづく)