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社長日記

2006年12月25日

2006 年末

 今年も終わりに近づいてきました。昨年は、いろんなことが「終わった」年でしたが、今年から、ようやく新しいことが「始まる」年になったような気がします。正月に備えて、渋谷市場に行って買い出しに行き、上の紀伊国屋書店に行きましたが、特に買いたい本もなく、雑誌を立ち読みして帰ってきました。渋谷は、それまで通っていた旭屋と大盛堂がなくなってしまいました。本屋さんはだいたい同じ品揃えだが、誰もが「自分の本屋さん」というのを持っていると思います。僕の学生時代は、四谷の「文鳥堂」が自分の本屋さんでした。オーナーの吉田さん(故人)や木戸店長とは、個人的な関係もありました。ブックファーストや青山ブックセンターは、おしゃれな感じですが、どうも「自分の本屋さん」とは感じられない。最近は、池袋の島根歯科に毎月一回、歯のクリーニングに行くので「池袋ジュンク堂」が、僕の本屋さんという感覚です。もっとも僕は話題の本とかにはほとんど関心がないので、専門書のコーナーばかりですが。そういう意味では、ここ20年くらいの間の「僕の本屋さん」は、神保町の「古書会館」になります。毎週のように開かれる古書展には、見たこともないような「本」が待っています。本との出会いというのは、本来そういうものではなかったのでしょうか。話題の本とか、大好きな作家の本だから買うというのとはちょっと違う、全く新しい人や、聞いたこともない事実と出会うことが出来るのが、僕にとっての「本」の魅力です。

 アマゾンの「ユーズド」というサービスが出来てから、新刊ほど安い値段で買えてしまうようになっています。僕も自分の著作が100円で買えるので(送料はかかりますが)献本用に買っています。大量生産された新刊が、即座に新古本市場に流れてしまうのだから、なんとも、発行社側としては、はがゆいと思います。ブックオフもそうですが、大量に発行された本ほど、大量に新古本市場に流通する。これまでの出しっぱなしの出版システムというのは構造的に破綻しているのではないか。

 オンブックは、幸か不幸か「小規模コンテンツ流通ソリューション」を目指しているので、新古本市場に流れるほど大量に販売していません。まだ正式に活動してから2年ぐらいですが、もうすぐ刊行点数が50点になります。毎月4冊のペースですが、恐らく来年半ばぐらいから、飛躍的に発行点数が増大すると思います。「3年で日本最大の発行点数の出版社」という思いも、あながち夢想でもなくなってきました。販売部数ではないですよ(笑)。

 ほどんど毎日のように、出版希望者からの問い合わせが送信されてきますが、大半が、すでに既存の出版社での著作がある人たちだということは、少し驚きでした。本を出すというのは、一度出して見ると分かりますが、読むのとは全く違う刺激的体験なんです。

 さて、オンブックの方向性については、具体的なシステムによって説明していくことが一番だと思っていますが、現在の時点で、僕たちが考えているロードマップの一端を書きます。あくまでもビジョンですので、必ずしも実現出来るということではありません。

1.オンブックは「オンデマンド書籍」と「小ロット一般書籍」があります。オンデマンド書籍は、1冊単位の受注生産、小ロット一般書籍は、通常の取次経由で書店販売しますが、初版発行部数は1000部単位で構成されています。

2.発行コストのハードルを下げて、発行しやすくすることによって、多様なコンテンツを発行出来るようになります。「印刷費・流通費」の他に出版社利益さえも著者から吸収しようという自費出版会社とは違うスタンスでの、著者との関係性を模索しています。現状のルールは、オンデマンド書籍の場合は、初回10部を著者購入。小ロット一般書籍の場合は、初版部数の1/3を著者購入という条件になります。

3.僕らが考えているのは「小規模コンテンツ流通システム」を構築するということで、最終的には、著者が出版社になり、オンブックは「流通ソリューション」を提供する立場になるというものです。これまでのように「著者が原稿を書くだけ」というのではなく、「印刷・流通のシステム」は提供しますから、著者自身が出版社になってください、ということです。宣伝も営業も、出版社の仕事になります。ISBNも、内容に関する法律的義務も、出版社に負っていただきます。その代わり、自由に出版活動が出来ます。

4.ただ、この段階に行くまでには、まだまだ時間がかかります。現実的には、オンブックがISBNを取得して、取次とも契約をしていますので、オンブックが発行する書籍については、オンブックにさまざまな発行責任があります。ただし、方向性としては、既存の出版社構造の枠にとらわれないスタイルを模索していきたいと思っています。

5.来年の目標は、「オンブック出版社」の原型を作ることです。上の構想に基づいて、オンブック以外の法人・団体などで、自前でISBNを取得して発行体制を整えてもらい、オンブックのソリューションを使ってもらいます。その場合は、これまでの専業出版社では採算的に合わないので、学校・研究機関・団体などの、別途にコンテンツを保持・生産しているところの「出版部門」として位置づけてもらいます。この辺の作業については、まだプロトタイプ作りですので、問題意識のあるパートナーを探しながらルールを作っていきたいと思っています。

6.僕たちのテーマは「小規模コンテンツ流通ソリューション」であり、それは結果的に「コンテンツ・データベースの構築」になります。蓄積されたコンテンツの出口として、一番期待しているのが「携帯コンテンツ」です。すでに、松下電器産業、ソニーピクチャーズエンターティメント、日本出版販売と、携帯コンテンツの提携業務を契約しています。また、携帯コンテンツのユーザーを、出版業界の方に誘導しようとも思っています。

7.オンデマンド書籍において、最大のネックは「印刷コストが高い」ということと、「販売チャネルが限られる」ということです。印刷コストについては、現状ではアメリカのオンデマンド出版の3倍から5倍程度の高コストになっています。これがアメリカ並みに下がれば、日本のオンデマンド出版は、一気に拡大すると思われます。オンデマンド書籍も一般書籍も、同程度の定価がつけられるようになると思います。特に、カラーのオンデマンド書籍は、ベラボウに高いので、この面でもコストが低減する方法を考えていきたいと思っています。アメリカにおける「フォトログとルルコムの連携」のようなビジネスモデルを日本で考えている人がいたら、ぜひ、連絡してください。

8.オンデマンド書籍についての販売チャネルですが、現在は、取次経由での販売をしていません。それは、オンデマンドの印刷原価が高いので、流通マージンをのせると、常識外の定価になってしまうからです。まずは、安いオンデマンド印刷の登場を待つしかないのですが、別の方策として「オンデマンド書籍の卸売り」を計画しています。オンデマンド印刷でも、100冊程度をまとめて制作すれば、若干安く出来ます。ですので、100冊単位で購入してもらえれば、割引価格で提供出来ます。オンブックのオンデマンド書籍のリストの中から、「うちの店で売りたい」「うちのコミュニティで売りたい」という相談があれば、卸すことが出来ます。もちろん既存の書店さんでもかまいません。買取制になりますが、将来的に、既存の出版流通ではないルートを作っていきたいと思っています。そのためには、まず、良質なコンテンツが揃わなければ始まらないと思いますが。これは、以前に「新文化」に掲載された僕の「オンブック宣言」にある「インターネット神田村」の構想のことです。

 さて、渋谷市場で買ってきた「金時芋」がゆだったようなので、これから「栗きんとん」作りに入ります。今年も一年、ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。(橘川幸夫)


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