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社長日記

1996年11月01日

通販ビジネスに見る画像と想像力について

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標題=通販ビジネスに見る画像と想像力について
掲載媒体=日経ビジネス/視点
発行会社=日経BP社
担当=酒井弘樹
執筆日=1996/11/01(ごろ)
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■通販はプレゼント

 通信販売による購入は「自分に対するプレゼント」である。通常、個人が商品を購入する動機は必要性であり、選択基準は適正価格かどうかの判断による。しかし、他人にプレゼントする商品を探す時、人は、必要性を第一基準にしない。「これを貰ったら彼(彼女)は、どんな表情をしてくれるだろうか」という想像力による満足度を基準にする。だから、自分で購入してためらうような冗談商品なようなものでも「プレゼント商品」として成立するという場合がある。
 通販商品が宅配便で届くと、花束のプレゼントが届くように、わくわくとしてしまう。通販商品は、購入申し込みをして届くまでが貴重な時間である。ちょっと怪し気な健康器具や、調理便利グッズなども、それが怪し気であるがゆえに、想像力をかきたてる。裕福な老人などに通販マニアが多いのも、通販の「プレゼント価値」が存在するからだと思われる。購入したけど、ほとんど使わなかった通販商品というのを抱えている人も多いだろう。

■ラジオの通販

 テレビの深夜放送や通販雑誌などは繁盛してるが、ラジオでも通販番組が盛んになってきた。テレビほどの売り上げ高は見込めないが、ある、驚くべき現象が起きている。ラジオの通販は実に成績が良いのである。売り上げ高ではなく、「返品率」が以上に低いのである。
 世の中、ビジュアルの時代と称して、テレビでも雑誌でも、画像の鮮明さを重要視してきたが、ラジオ通販という画像のないメディアで、返品率が少ないとはどういうことなのだろうか。
 ラジオというのは音声によるメディアであるから、リスナーの想像力に頼りながら番組が成立する。逆に言うと、画像が豊富なテレビに比べて、リスナーの想像力が発揮しやすいメディアなのである。テレビや雑誌で、通販商品の写真画像を見れば、ユーザーは簡単に商品のイメージをとらまえることが出来る。しかし、到着した商品の実物を見て「あの写真と全然違うではないか」とクレームをつけてくる。それに対して、ラジオは画像を送れないので、リスナーは想像力で商品をイメージするしかない。すると、到着した商品は、それぞれの個人が想像していたものとそんなに変わらないのだ。もし想像したものと違っていても、画像を見ていないだけ、「裏切られた」とは追求しにくいのであろう。

■インターネット

 インターネットでは最初、画像を自由に操れるWWW(ホームページ)が注目された。しかし、画像というのは一度見てしまえば繰り返して見るものでもなく、インターネット・サーフィンの熱も冷めつつある。しかし、テキスト中心のメールの利用は急速的に拡大している。テキスト・メールもまた、画像とは違って想像力が必要なメディアである。NTTは、80年代後期に「VI&P構想」を提出し、画像通信、テキスト・メール、移動体通信を21世紀通信ビジネスの柱にするとした。画像処理や携帯電話には熱心だが、テキスト・メールの部分はなおざりにされているように見える。ラジオの通販番組の例でも分かるように、画像による情報提供がベストの選択ではない。マルチメディア社会が進めば進むほど、利用者の想像力を喚起するシンプルな素材が大事になってくるのだ。
 インターネットの世界では、「ポイントキャスト」や「ストリームワークス」など、新しいシステムが提案され注目を集めている。しかし、これらは、システムの側からの提案であるが故に、うまく稼働しないだろう。回線やサーバーに対する負荷が高すぎて、企業などでサーバー管理している人は、これらのシステムを使わせたがらないのだ。システム側からの発想ではなく、利用者の側にたった、利用者の想像力に働きかける動きが始まらないと、インターネットは永遠に実験場でしかなく、生き生きとしたビジネスの土壌として成立しないだろう。