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社長日記

1976年01月01日

Rockin'on NO.20_1976_01

お風呂屋さんのおはなし
橘川幸夫

 僕は銭湯が好きだ。と言っても別に風呂好きなものではなくて、家風呂よりも銭湯の方がよい、という事だ。別にどうという事ない気分の問題です。
 ところで最近の銭湯で気になったハナシ。でも本当は大分前から気にはなっていて、ずうっとモヤモヤしていたのです。それは、シャワーのこと。
いつの頃か銭湯の鏡の上のとこにそれぞれシャワーが付くようになって、ついた頃は随分と便利になったものだわい、と感心したが、だけどあれば隣の洗い湯がバシャバシャ飛んできて、すごく不愉快になる事がある。多分、よく分らないが僕も隣の人にひっかけているのかも知れない。せっかく洗い終わってサッパリしたところへ、隣から、シャンプーの泡みたいのが飛んで来るのは非常に不愉快な事だ。コノヤロメエ!と思っても、そこはそれ、そこは都会人、平然と飛んできた泡を流し落とす。これが本当に、水に流す、という訳。(笑い)
でもでも、よく考えてみると、あんな個人用シャワーは日本みたいな銭湯には必要ないんじゃないかなあ。あの装置はまぎれもなく欧米文化の間違った導入方法だと思うんだよ。ここんとこだよな、日本近代文学者の陥ち込んだ近代の痛み、近代の奈落というのは、うむ。
パチンコ屋というのは、あんまし隣同士で密集して当たり台を作ると客同士がぶつかったりせまくるしくなるので一台置きによく出る台を置くようにする。だから偶数が出てる日は偶数が出るし奇数が出る日は奇数が出る。というハナシだ。でも最近のは知らない。このハナシを聞いたのは僕が高一の頃、つまり10年前だからね。
銭湯とパチンコ屋では違うのだからパチンコ屋のように銭湯のシャワーもそうしろ、なんて言わないけど、そういうデリカシーのある営業をやってもらいたいと思うのです。銭湯って確かすごくデリカシーに満ちてて粋な場所だったと思ったけど、最近は何か集団人間洗濯機みたいだ。
あのシャワーを考えた犯人は誰か。僕はちゃんと知ってるんです。眼をつむれば、はっきり人相まで浮かんでくるのです。きっと5〜6年前、すごく周りがいそがしいような気分で、何か仕事をしなくちゃいけないと思った暇人なんです。いわゆるアイデア・マンといわれる輩だと思うんです。暇な奴が暇にまかせて考えた(思いついた)そんなもの発明でも発見でもありません。だって全然、必要の切実感も空間の確かな充足感もないもの。そんなの退屈でメイワクなだけだ。
つまんないアイデア・マンが残したつまんないアイデア商品はちょっと部屋の中を見回してもたくさんあります。今度、大掃除してみんな捨ててしまおう。アイデアで生きた人って、あんまし信用できません。もし本気でそうだったなら、今頃は坊主にでもなってるはずです。きっとそうです。