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2006年07月14日

オンデマンド印刷市場の問題点

日本のオンデマンド出版の最大のネックは印刷費である。アメリカの相場の大体、5倍から10倍、高い。このコストがアメリカ並みになったとしたら、日本のオンデマンド出版は一気に爆発するだろう。なぜ、そんなに高いかというと、オンデマンド印刷は高度なコピー印刷なので、コピー機によるカウンター料(チャージ)があるからだ。アメリカには、そんなルールはとっくになくなってる。

コピー機もプリンターも、ハードのイニシャルコストは原価割れにしてでも普及させて、ランニング費(カウンター料とか、ばか高いインク代金とか)で利益を上げようというコピー機メーカーの企業戦略がある。無料で携帯電話を配ってバカ高い通信費で永続的に子どもたちから小遣いを奪った携帯電話のモデルと同じだ。

このビジネスモデルが商業印刷であるオンデマンド出版の領域にまで浸食しているので、たまったものではない。ある程度、高いハードコストでも先行投資をして、用紙とインクという原価をギリギリの値段に押さえてフル回転し、投資コストを回収するという、普通のビジネスモデルが組めないのである。

オンデマンド出版が発展しなければ、オンデマンド印刷機の市場も発展しない。そんな当たり前のことが、なんでメーカーは分からないのだろうか。視野狭窄になっているコピー機メーカーの中で、発想の転換を計ろうとする人を探している。

2006年05月05日

本当に出したいと思ってる原稿を待ってます。

 出版のスタートは、「出したい本を出す」ということだったと思う。それがいつの間にか「出したい」という著者・編集者・出版社の意欲はどこかへ行ってしまい、「売れる」という客観的な判断が出版することの理由になった。売れないより売れた方が良い。だけど、それは結果であって、出版することの最初の動機ではない。現代では、どんな売れっ子の作家でも、本当に書きたいことを書いているのかは疑問である。

 長野の平安堂グループは、古本コーナーを設置したということだ。新文化(2006年4月27日号)の記事に詳しいが、それはブックオフに対抗するとかいうことではなくて、長野の書店として新田次郎の作品が「絶版だから、ない」とは言えない、という本質的な理由からである。素晴らしいと思う。目の前にいるお客を大事にするという商いの基本を、書店に限らず、システム思考に毒された日本社会は、思い出すべきである。

 古書業界というのは、本のメキキとして貴重な古書を守ってきた。ところがブックオフのように、本の中身の価値などどうでもよくて、表面的な汚れがあるかないかで一律にまとめ買いされるようになると、大事な本が「破棄本」として消されていく。古本屋も、続々とリアル店舗を閉鎖して、ネット販売にシフトしつつある。新刊本と新古本と古書などが一体となった店舗が必要となっていくのだろう。

 オンブックは、出版業界全体を見ながら、システムを構築している。オンブックが目指すのは、現状の出版業界では出版しにくい企画出版や、新人デビューのサポートである。貴重な古書や資料も、さまざまな形で再登場させたいと思っている。新しい才能や、見えにくい思いを顕在化させることによって出版業界は活性化すると思う。コンテンツの活性化以外に、業界を活性化させる方法はない。

 オンブックでは大量の販売モデルは出来ないので、より広範囲に売れそうなものについては、既存の出版社につなげていく。すでに、いくつかの出版社と相談が始まっている。外国の出版社に紹介するルートや、電子ブックへのルートも確保してある。

 既存出版社の編集者から持ち込まれる企画もあるので、企画内容によって、オンブックで出すか、別の出版社に持ち込むか判断することになる。

 とにかく、少しでも可能性のある原稿は、書籍の形にして世の中に出す道を探りたい。もちろん「箸にも棒にも」な原稿については、丁重にお断りしている。

 出版が面白いのは、多種多様な価値観とセンスが玉手箱のように詰め込まれているからであり、その面白さは、僕たちが生きている社会の「面白さ」を映し出している。社会を面白くしたいのなら、そこに生きる人間、僕たち一人一人が面白くならなければならないのだろう。
 あなたの個性の表現を待ってます。

2006年04月13日

碧天舎の倒産・自費出版あれこれ

碧天舎が倒産して、自費出版の危うさが一気に露出しそうだ。
東京新聞のリポートがきちんとしたリポートをあげている。

ただし、東京新聞だって自費出版事業をやっているし、大手出版社や新聞社はだいたいやっている。文芸社や新風舎の急成長に合わせて、それまで批判的だった旧来型出版社も、一斉にビジネスの匂いをかぎつけて参入した。

旧来型の印刷・流通リスクを出版社が負う形態では、著者が出したい本が出せないので、著者がリスクを背負う形の形態もありえない話ではないだろう。オンブックで「カフカとキルケゴール」を刊行した中澤先生の説明のよると、キルケゴールは生涯自費出版で書籍を出していたし、カフカは生前は出版社には相手にしてもらえなかった。日本の明治・大正の名作にも自費出版はある。

インターネットが登場して情報の「発信者負担」という新しい風潮が、自費出版を出そうという気持ちをプッシュしたこともあるだろう。しかし、現在の自費出版事業は、あまりにも著者の側への負担が大きすぎるビジネスモデルである。それだから自費出版社が儲かったのだろうが、出版を知らない素人を手込めにするようなルールも少なくない。

たとえば、高額の協力金を著者が支払っているにもかかわらず、販売印税が2%とかいうルールの自費出版社がある。つまり原理的には、印税の2割を支払えば、印刷しなくても「全部売れましたよ」といえば済んでしまうのだ。通常の出版社の負担で、一般の人からは見えないコストが在庫管理の倉庫代である。在庫を早めに処分してしまえば、倉庫を持つ必要もない。

僕は、自費出版の流れは悪くはないと思ってる。編集者のフィルターを通した価値観しか書籍に出来ない出版構造は不純だし、失礼な言い方も知れないが、どのような人であれ、それなりの人生を歩めば、人に伝えたい・社会に残したい体験や思いがあるはずだからだ。
ただし「貴重な体験そのもの」と「貴重な体験を書籍として表現する」ということは別の次元の話であり、自費出版された書籍の多くが、自己顕示欲やうぬぼれのエゴの固まりでうんざりすることが多いのも事実だ。

オンブックは広義の「自費出版サポート」事業であるが、事業を開始して問い合わせのある、99%が既に著作のある人や、プロのライター・編集者である。オンブックは、著者からお金をふんだくるために(笑)おいしい話はしない。

しかし、純粋に素人の方で本を出したい人向けの合理的な自費出版ソリューションも必要であり、サービスを準備中である。

本を出したい人は、安易にお金で解決しようとしないで、まずは、自分なりに情報を集めて、出版のシクミ、手続きなどを調べてからにした方がよいですよ。書かれた原稿も、自分で何度も読み直すのはもちろん、なるべく利害関係のない第三者にも読んでもらって感想をもらってください。

オンブックでは定期的に説明会を開いています。関心のある方は連絡ください。

2006年04月05日

取次店「大阪屋」に口座開設!

携帯でテレビが見れるようになってきた。日本は便利に発展していく……って、本当だろうか。書店には今日も新刊が続々と登場してくる。取次の窓口には、毎日平均400冊の新刊が持ち込まれると言う。豊かな出版文化……か。

現在、出版物の取次店は、東販・日販の大手2社で8割が占められていて、蛇口はお湯と水の2つである。ここを通らないと、書店には並ばない。取次は、さすがに書籍のメキキだけあって、内容を読まなくても、表紙とタイトルだけで、だいたいの売れ行き部数が読めてしまう。しかし中には「こんなの絶対売れない!」と言われたものがヒットしたり、「これは絶対に売れますよ!」と言われて初版を大量に刷ったけど返本の山になった、という業界恨み節も少なくない。毎日400冊の新刊を、中身を吟味して選択することなんか不可能なのだ。

戦前は取次というのは数百社あったという。出版社が成長すると、他の出版社の書籍もついでに配ってくれたり、版元やめて卸になった方が儲かると思った出版社などが多数あった。現在の2大取次制になったのは、戦争中の言論統制の名残だという話は有名である。国家批判の宗教や政治思想を禁止するために、取次がたくさんあっては管理出来ないので、国家が集中させたのである。

戦前の取次の状況は分からないが、想像するに、それだけ多くの取次があったということは、仕入れの人もバラエティに富んでいただろから、相当、奇妙な本でも書店に並んだのだと思う。最初から売れそうもない本も市場に出たかも知れないが、そういうキャパシティの広さが大正から昭和初期の出版文化を育んだのだと思う。内容を峻別するのは、出版社や取次の窓口ではなく、市場そのものであるべきです。

さて、オンブックは、出版という構造のハードルをぐっと低くした。オンデマンド出版であれば、誰もが簡単に出版することが出来る。戦前のように「出したい人!」がいれば、出せてしまう環境を作りたいと思う。

しかし、オンデマンドなので、販売はサイトに限定されるから、書店での販売力にはかなわない。まぁ、あわてないでください。オンブックは、とりあえず出版取次の「大阪屋」さんに口座を開きました。これから、どういう動きをするのか期待してください。

2006年02月04日

マーケットプレイスの衝撃

■橘川幸夫

 アマゾンドットコムに「マーケットブレイス」というサービスがある。アマゾンの決済システムである「Amazonペイメント」に登録すると、誰でも自分の持っている本を無料で出品出来る。成立した場合は、1アイテム100円と販売価格の15%を手数料としてアマゾンに支払うことになる。
 2002年からスタートしたこのサービスの恩恵を受けたのは、古本業界である。小さな古本屋のレジ番のおばさんが自分の店の在庫をインターネットで登録していることも少なくない。町の古本屋が一気に日本全国に販売ルートを持ってしまったのだ。
 僕もよく使うがほとんどは個人の出品ではなく業者の場合が多い。最近は大手の古本屋チェーンが在庫管理システムを開発して倉庫に眠っている在庫をすべて登録するような動きになっている。ブックオフはもちろん、日本各地の大手古本屋がアマゾンに流れこんできているのだ。
 神田の古本屋街と出版社は古くから共存関係にあった。作家や編集者は古本屋街を愛していた。しかし、古本屋と出版社は本質的には利益背反にあり、新古本業態であるブックオフが登場するまで、そのことは曖昧なまま見逃されてきた。古本屋が繁盛しても、その利益は出版社や著者とは無関係である。図書館もまた出版社とは対立する関係にある。本来個人が購入されるべき書籍が「回し読み」されている、というのが大手出版社の論理だが、小さな専門出版社にすれば、図書館は個人と同じように大切な「購入者」である。
 古本屋と出版社が共存出来たのは、古本屋の多くが個人商店の規模であり本好きのメキキ親父がいたりして、そのくらいのことであれば目くじらを立てることでもなく、出版文化業界という立場からすれば必要な役割だと思われてきたからだろう。ところが出版社以上の企業規模に発展したブックオフのような存在が出てくれば別である。それは本好きの親父の生業ではなく、出版社と著者の権利を収奪するだけのシステムに見えてきたのだろう。
 そして「マーケットプレイス」の急速な拡大である。巨大な無店舗のブックオフが出来たようなものである。近い将来、古紙回収業者のようなものが「無店舗ブックオフ」として登場してくるかも知れない。資源リサイクルという面では必要な社会システムかも知れないが、これは既存の出版モデルを揺るがすことになるだろう。アマゾンは既に日本最大の書籍小売業に成長しているから、ブックオフに対してはあからさまに否定的言辞を吐く大手出版社もアマゾンのビジネスモデルについては文句を言いにくいだろう。
 現在の出版社のビジネス構造は、初版で原価を回収して増刷以降で利益を上げるというものである。しかし、初期ロットで販売した書籍がマーケットプレイスでリサイクルするようになったら、増刷への大きなブレーキになるだろう。長期でコツコツ売ってロングで増刷を繰り返すような専門書は、もう二度と増刷にはならず、出版社も著者も長期の利益収入は期待出来なくなる。まして絶版になったものをそのまま復刊するということはなくなる。
 いきおい大手出版社は短期で一気に話題を作って売り飛ばすアメリカ型のブロックバスター方式による出版方式に向かわざるを得ないだろう。小さな専門出版社はどうなるのだろうか。
 すでに小出版社は、自社の在庫を隠れてマーケットプレイスに出品しているところもある。表だってやると取次との再販規定に触れるのだろう。しかし小出版社にとって在庫の費用負担は大変なもので、断裁するのは忍びないとすれば少しでも売上げに結びつけたいと思うのは当然だろう。かくして日本の再販制度はこうした一穴から崩れていくのかも知れない。
 書籍というのは雑誌のように、その瞬間だけ、決算期間だけに売れればよいものだろうか。30年後、100年後の読者に贈り物として届けられるものなのではなかったのか。インターネット以後の出版業界の構造変化の中で、オンブックの果たす役割が一つあるのである。
(古本業界のマーケットプレイスへの取り組みなどについて関心のある人は、オンブックの発行説明会においでくだされば、教えてあげますよ)(笑)

2006年02月02日

グローバル出版

■橘川幸夫

 先日トランネットの高野社長が来社して一杯やりました。トランネットは出版翻訳の会社で、翻訳・通訳の会社はたくさんありますが、出版に特化した翻訳会社は少ない。通常の翻訳会社は出版社からの受託作業だが、トランネットは積極的に海外の出版社が発行する書籍をチェックして版権交渉を行い、サマリーを作って日本の出版社に営業する。企画が採用されたら翻訳業務を行う、というスタイルである。

 こうした活動によってトランネットは世界中の出版社との関係を築いている。そして、これからやろうとしているのは、海外の出版社に日本の書籍コンテンツをプロモーションしていこうということである。

トランネット

 現在、日本では年間7万点近い新刊が発行されている。そのうちの1割近くの本は海外書籍の翻訳本である。海外の出版社にとって日本は優良な顧客である。ところが日本の書籍が海外の出版社で発行されるということは極めて少ない。コミックスを除けば年間100点ぐらいだと言われている。村上春樹や吉本ばななのような文学作品が一部受け入れられているが、大半は「折り紙の本」とか「お茶と禅の本」みたいなものである。日本は海外から見るといまだに「フジヤマゲイシャの世界」だと思われているが、それは日本自身が現在の日本を海外に紹介していかなかったからである。

 海外で日本のコンテンツを発行しようという試みはこれまでも何度もあった。古くはPHPがトライし、講談社インターナショナルなどが今でも活動している。しかし本格的にニューヨークに拠点を作り、日本の書籍を発行するための独自の出版社を作ったのは「バーティカル」が初めてである。すでにたくさんの日本の大物作家の本を発行している。

バーティカル

 ちなみにバーティカルの社長は酒井弘樹くんで、かつて日経新聞社の出版局で僕が「一応族の反乱」「生意気の構造」という本を出した時の担当編集者であり、その後「日経ビジネス」の編集部に移ったが、その時も「視点」の頁で連載コラムを書いていた時の担当をやってくれた。今後の活躍を期待している。

 「日本文化」を海外に輸出するというテーマは日本政府のテーマでもあり、経済産業省なども積極的に調査を行っている。トランネットやバーティカルの活動に比べて、日本の出版社は日本市場の中で業界的交流を楽しむことだけで満足しているように思える。日本には独自の感性と文化の蓄積があり、そうしたソフトウェアが海外でもっと評価されるようになるだろう。

 さて、オンブックでは、現在、英語で書かれた原稿とイタリア語で書かれた原稿が持ち込まれている。今後、こうした動きは加速すると思う。国際宅急便を使えば大半の国には送料2000円で配送出来るので、価値あるものならオンデマンド型のグローバル出版も可能だと思う。関心のある方はぜひ追究していただきたいと思う。

2006年02月01日

出版社ブーム?

■橘川幸夫

 出版界というのは2兆円規模の業界なので、トヨタ一社で20兆円などいう規模から比べたら零細な業界である。もっともこの2兆円ちょっという業界規模のとらえかたも取次を通した販売額のことなので、フリーペーパ−やPR誌や行政出版物その他の無数の非売品出版物などの総額を合わせたらもっとずっと大きなものになるだろうし、出版をベースにした広告ビジネスやキャラクタービジネス、版権ビジネスなど、ビジネスの領域は拡がっているはずである。

 ただ、出版業界というのはどうも特別な意識があるらしく、金融や商社のエリートたちと飲んでたりすると「いや僕も本当は出版社に入りたかったんだ」という人が少なくない。そういえば、こないだ「中井英夫の『虚無の供物』を文庫本にしたいという一心で商社を辞めて講談社に入った」という人のことを聞いた。また新興の急成長企業などは必ずといってよいほど出版社をやりたがる。土地バブルからITバブルまで、新興出版社は別な事業で利益をあげているところが少なくない。昔、あるゲーム会社が出版社をやりたいと相談に来て、「儲からないからやめなさい」と言ったが、その会社は「出版が利益率が低いことは分かっているが雑誌を発行すれば見かけの売上げ高がたつので上場のためには必要だ」みたいなことを言ってた。新人採用の面でも関連会社に出版会社があることは有利なんだそうだ。

 さて、またもやバブル再来なんだろうか、出版事業に関心を持って相談に来る人が増えてきた。まったくのゼロからスタートしたいという企業や、マニュアル専門の出版やってたが一般書籍もやりたいという出版社や、潰れそうな出版社を買収したいんだがどこかないか、という相談までいろいろだ。僕は、ライターでもあり出版社の立ち上げもいくつか経験しているので、人づてで相談に来るのだ。

 一方で老舗の出版社がのれんをたたむということも少なくなく、こうして出版業界は新陳代謝を繰り返している。たぶん、それだけが出版業界の魅力で、自動車メーカーや家電業界など、普通の業界は新参企業が雨後のたけのこみたいに出てこないものね。新しい出版社の登場は歓迎すべきことだと思う。ぜひオンブックと連動しましょう。

オンデマンド社会に向けて(1)

■橘川幸夫

 近代のマスマーケティング社会の成熟と飽和の次に来るのがオンデマンド社会です。これまでのような「大量生産・大量広告・大量消費」のスキームは、一点のメッセージをあまねく暴力的に波及させることは出来ましたが、インターネット環境の充実により、そのような暴力的なエネルギーを使わなくても「必要な情報を必要な人に」的確に伝えることが出来るようになりました。オンデマンド出版は、そうした情報インフラ環境の整備の中で生まれました。

 オンデマンド出版は、もともとはIBMが大規模なコンピュータシステムを販売する時に、いちいちマニュアルを印刷していては管理が大変なので、売れたらその都度マニュアルを印刷するというシステムを自社開発したあたりからスタートしてます。プリンターを連結してラインを組んだわけです。また他方でゼロックスをはじめとする複写機メーカーが複写機の側からオンデマンド印刷を追究していました。世界にはさまざまな事務機器メーカーがあり、カラー印刷に強いインディゴ(イスラエル)とか多様な用紙に印刷することを得意とするオセ(オランダ)とかがあります。

 同時に「オンデマンド出版社」もいろいろと出てきました。日本でも数年前からさまざまな追究がされていますが、聞こえてくるのは苦戦しているという話ばかりです。その理由は、いずれも「印刷会社」とか「取次」とかが、システム優先でビジネスモデルを組んだからだと思います。出版事業で一番大切な「編集企画」を中心としたオンデマンド出版事業ではなく、印刷業のサービスの一環でしかなかったからでしょう。既存の出版社も関心を持って活動していますが、オンデマンド出版とは「既存の出版社の利権をスポイルする」という本質があるので、本気で考えたらちゅうちょするはずです。既存の出版ビジネスの邪魔にならない程度に補完する役割しか与えられていないように見受けられます。

 現在、アメリカでは「ドロップシッピング」というのが話題で、日本でも新しもの輸入好きのマーケッターなどが「アフリエイトの次はドロップシッピングだ」などと騒いでいます。「cafepress.com」が有名で、例えば「オンブック」という画像を登録すると、その画像をロゴにしてTシャツからマグカップまで、何十種類の商品がデザインされ販売されます。売れたら画像の印税が小切手で送られてくるというシクミです。

カフェプレス

 このサービスの中に「本」もあります。WordのPDFファイルで送ると本にして販売してくれます。オンブックのように10冊購入義務もなく、完全無料出版です。このサービスを見た時、「オンブックは勝てる!」と思いました。なぜなら、これは日本のオンデマンド出版社がやっている究極の姿であり、いわば「書籍発行の自動販売機」です。こうしたシステムは社会的に必要だと思うし、日本にもあれば便利だと思いますが、オンブックはそちらの方向には向かいません。単に本を出したい人向けのサービスではなく、「本を出して人に伝えたい」という人たちを大事にしたいと思います。出版とは本を出すことが目的ではなく、本を出して自分の思いを人に伝えることが目的だと思います。そうした思いとつながっていきたいと思います。

 アメリカにはもうひとつ注目すべきサイトがあります。「lulu.com」といって、レッドハットの創設メンバーであるビルヤングがやっているものです。もともとは、Linuxを普及させるためのマニュアル印刷を追究して、ここに至ったと聞いてます。さすがにオープンソースの考え方を理解している人がやっているだけあって、「自動販売機」よりは良さげなコンテンツが集まっています。更に、私たちが追究している「オンラインDTP」なども実現しています。(もちろん、そのソリューションは英文用なので、私たちが開発している「タテガキくん」(笑)にはかないませんが)

ルルコム

 アメリカでの動きはMSを含めていろいろあるようですが、これは別途、オンブックの市川くんが報告していきます。

 オンデマンド出版は、「インターネットか出版か」という二者選択ではなく「インターネット時代の出版文化とは何か」を突きつけているのだと思います。出版文化とは単に編集やデザインなどのことではなく、印刷から流通、販促まで出版事業をトータルにとらえることです。私たちは微力ですが「日本型のオンデマンド出版」を追究していきます。